越後山脈山籠もり,4日目です.「樹海ライン(国道352号)」.遅い年では6月下旬まで雪に閉ざされることもある,日本で一番最後に冬季閉鎖が解除される国道.そんな全サイクリスト憧れの幻の道路を,ついに走ることができました.世界屈指の豪雪山岳地帯をゆく道路は,人を寄せ付けないような異次元の景色の連続でした.
本日の行程
1.まずは御池まで
前日の燧ケ岳登山の疲れもあって,朝はゆっくり目の9時出発.
宿の方が記念写真を撮ってくださった.
2泊したこの宿も,アットホームでくつろげるいい所だった.
今回の旅,本当に宿泊場所には恵まれている!
本日8月29日は日曜なので,補給食買い出しに立ち寄る檜枝岐村唯一のスーパー「JA檜枝岐村ストアー」が午前10時の開店.どう頑張っても10時までは檜枝岐村で足止めを食らってしまう.檜枝岐村での食料の調達,難易度高し.朝の出発をそこまで急がなかったのもこのためだ.
樹海ライン内は約80kmに及んで商店が一つもないので,まず何よりも先に補給食の買い出しをする必要がある.補給の重要性は昨日の登山で痛いほど学んだ.しかしこういう山奥だと大体物価は高い.
それなりの出費は覚悟していたのだが......ここでうれしい誤算が起きてしまう!
檜枝岐村唯一のスーパー、JA檜枝岐村ストア
— ENDO (@mame_1410) 2021年8月29日
山奥だから高そうだなと思ってたけど
あんパン1個まさかの税込50円!!!
100円あたり652kcalという驚異的な補給効率を叩き出してしまった pic.twitter.com/gZacxzs5lX
半額セールのラッシュで,過去最高の補給コストパフォーマンスをここ檜枝岐村で記録したww ありがとう,JA檜枝岐村ストアー.
御池までは昨日走った道と全く同じだけど,何回でも通りたくなるようないい道だ.緑が濃くて,大自然独り占め感が素晴らしい.
昨日は左に行った分岐を,今日は直進する.知っている道から知らない道に入るのは,自転車でワクワクする瞬間だ.
2.樹海ライン! 御池~銀山平
御池との分岐を過ぎると,まもなく樹海ライン最高地点(標高1530m)に到達.
待ちに待った,ダウンヒルの時間!
最高に気持ちいい!!走っているときはもちろん,こうやって後から写真を見返しても癒される!
廃屋や柵など,人の営みの跡がちらほらと見られる.こんなところにいったい何のために作られたのか.考えれば考えるほど不思議だ.
酷道ツーリングでは珍しいことに,今回は昼ご飯をお店で食べることができる.
その名も「山ん中」.ド直球で大好きなネーミング!
いや,ほんとにここは「山ん中」なんだ.少なくとも半径10km以内に民家は一軒もないし,携帯も通じない.
ここの山菜は,よくある蕎麦とかに入ってる山菜の10000倍くらい味が濃くて,
生きている山の味がした.ケーキもすごい美味しかった.
おおっと,いよいよ樹海ライン名物「洗い越し」の登場だ!
洗い越しとは,橋を架けることが費用対効果に見合わないなどの理由から,川が道路の上を流れているものだ.日本の道路では非常に珍しい.ここ樹海ラインと,国道157号の温見峠などが有名どころ.
樹海ラインの福島県側には洗い越しはなかったが,新潟県に入ると洗い越しが連発した.




樹海ライン洗い越しセレクション!
最初は恐る恐る進むけど,慣れてくると水路の上を走る感覚が病みつきになってくる笑
意外にも,滑ったりハンドルが取られたりはしなかった.
32mmのグラベルキングのおかげかも.
洗い越し以外にも,樹海ラインの魅力はまだまだ尽きない.
右側に目をやると,急斜面に白い線が一直線に走っている.
一瞬,理解が追い付かない.あれは道路なのか?
深い谷を大きくトラバースして,今進んでいる向きとは逆向きに道路が続いている!?


近づいてみるとやっぱりあれは道路だった.奥只見湖周辺は地形が険しすぎて,道路の線形も鋭角のカーブが連続するとんでもないことになっている.面白い.
そしてこの崖,めちゃくちゃいい写真が撮れる.
どんなに険しい道でも,自分の力だけを頼りに進む,「冒険の自転車」
自分のライドスタイルを表しているような一枚!
2021年の愛車ベストショットだった.
奥只見湖沿いは,100mくらいのアップダウンがあり,登りきるとダム湖を見下ろすことができた.高校時代に走った秋田の太平湖を思い出す.
それでもダム湖が見えるシーンは全体を通しても少なくて,湖の展望というよりスリリングな走りを楽しむべき道だと思う.
カーブを曲がったらいきなりこの景色.もはや何の山かわからないけど,目の前に壁が立ちはだかる様子は圧巻の一言.樹海ライン,すごい.
3.樹海ライン!! 銀山平~枝折峠
県境から35kmくらいすると,銀山平に着いた.
突然道が幅広く直線になって,ついさっきまでの酷道とは雰囲気ががらりと変わる.
銀山平2000m級の山に囲まれた盆地になっているエリアで,温泉施設やホテルもある.奥只見湖の遊覧船の発着点にもなっている.40kmぶりくらいに自動販売機を見つけた.ここは樹海ラインの中で唯一文明を感じられる場所だ.
この後は樹海ラインの難所の一つ,「枝折峠」が待ち構えている.
いかにも嵐の前の静けさのような穏やかな雰囲気だった.
標高差は約400m,日も傾いてきているしサクッと終わらせようと思っていた.
しかし,またもや絶景が足を引き留める!
ヒルクライム中,ずっと視界に入ってくる越後三山.2000mの標高もさることながら,横にどこまでも広がってる.山脈!!!という主張が強すぎる.これは絶景!
18時前,枝折峠(1065m)を登り切った.峠自体は勾配もゆるく難所というほどではなかったが,これまでに洗い越し・断崖絶壁・数え切れないほどの急カーブを走り抜けて
きたからか,疲労感と充足感が半端じゃなかった.
4.樹海ライン完走!!!
あとはひたすら下れば魚沼市の市街地に出られる.そうすれば本日の宿がある浦佐駅までは一瞬だ.
何もない山の中から,だんだんと田んぼや建物が現れてきて,安心感が押し寄せてくる.人里に戻ってきたぞ~~!!
振り返ると,緑の回廊を抜けて,洗い越しと断崖絶壁が現れて,アップダウンと急カーブの道路は走りごたえしかなくて,最後には越後駒ケ岳の絶景を眺めながらフィニッシュ.これほどお腹いっぱいになれる道は他にない.
樹海ラインには,自転車旅に求める「冒険」のすべてがあった.走らせてくれてありがとう.
今夜は浦佐駅前のビジネスホテルに泊まった.3800円と格安なのに,風呂とトイレがセパレートで快適だった.
浦佐駅前のレストランにて,夜ご飯.椎茸のお寿司なんて初めて見たから,つい頼んでしまった.美味しかった.
翌日は三国峠を越えて高崎まで淡々と移動し,明後日はいよいよ秋田時代からの自転車仲間(現在東京在住)と合流して渋峠に挑む!最後まで山籠もりを貫いていく!
樹海ラインを無事走り切ることができて,この「越後山脈山籠もり」も前半戦終了だ!